シンポ等趣旨

日本音楽芸術マネジメント学会 第11回冬の研究大会

シンポジウム1 「音楽批評の今日的役割」

日時:2018年12月16日(日)13:15~15:30

会場:昭和音楽大学南校舎5階 C511教室

[登壇者]

入山功一 AMATI代表取締役

東条碩夫 音楽評論家

平野 昭 音楽評論家

松本良一 読売新聞社文化部

[モデレーター]

中村孝義 大阪音楽大学理事長・名誉教授/JaSMAM理事長

趣旨

このところ情報発信のツールとして、従来の活字メディアよりもネットが格段に重要性を増すようになった。専門家、一般愛好家を問わず、誰もが自由に情報を発信し、いわば情報が氾濫する高度情報化社会になった今日、果たして、主として活字メディアを媒体に展開される専門評論家などによる音楽批評というものは、現在の音楽文化に対してどのような役割を果たすことができているのだろうか。

かつては、音楽を提供する側である演奏家やホール、エージェント、それを事前報道したり事後論評に対して場を提供する新聞、雑誌などのメディア、専門家としての経験と研究に裏付けられた論評を大局的な見地から責任の所在を明確にして展開する音楽評論家、それにその論評などを楽しみながら自らの音楽観や音楽に対する愛好を深める一般愛好家が、適度に距離を置きながら、しかもそれぞれがそれぞれの存在価値を認め、分をわきまえながらバランスよく存在していた。その結果それぞれが充実感を感じる内実豊かな音楽文化というものが醸成されていたように思われる。

しかし今日、このバランスは大きく崩れ、音楽を提供する側の中には、それを公益性の高い文化事業と捉えるのではなく、単純な商行為と割り切り、事後批評など宣伝の役にも立たないし、評論家に聴いてもらっても何の意味もないと言い切るところも出てきている。また新聞などのメディアでも、総じて音楽評論に対する場を大きく縮減する方向にある。それに愛好家の中には、責任の所在も明確にせず、偏った見方から言いたい放題に、場合によっては中傷と言わざるを得ないような発言をネットで繰り返す人もいる。

もちろん評論家も活字媒体だけでなくネットを通じて活動を展開することもできるし、発信のあり方が根本的変化を遂げているのに、活字メディアや評論家がその状況に対応し切れていないだけという見方もなくはないだろう。ただどうも今日あるような状態が、社会における音楽文化の健全な育成や発展に資しているようにはとても見えない。このように大きく様変わりした社会の中で、音楽批評(評論)と呼ばれるものは、果たしてどのような今日的役割を主張することができるのだろうか。もしかすればその存在意味はすでになくなっているのだろうか。

今回は、AMATI代表取締役の入山功一さん(エージェント)、読売新聞社文化部記者の松本良一さん、そしてネットを活用される音楽評論家の東条碩夫さん、主として新聞で批評活動を展開される平野昭さんの4人の方をお迎えし、それぞれのお立場から音楽批評(評論)の今日的意味や役割、さらにはその存在感を論じていただくと同時に、評論家の立場からはエージェントやメディアに対する注文、また逆にエージェントやメディアからは評論家に対する注文などを述べていただき、表記のテーマについての議論を展開したい。

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シンポジウム2 「文化芸術への助成制度を考える」

日時:2018年12月16日(日)15:40~18:40

会場:昭和音楽大学南校舎5階 C511教室

■基調講演

坪田知広 文化庁参事官(芸術文化担当)

■報告「日本芸術文化振興会委託『イングランド及びスコットランドにおける文化芸術活動に関する助成システム等に関する実態調査』から」

矢田文雄 独立行政法人日本芸術文化振興会基金部長

石田麻子 昭和音楽大学教授、日本芸術文化振興会プログラムディレクター(調査研究)/JaSMAM理事

[new!] 同調査の報告書、資料編、別冊はこちらでご覧になれます。

■ パネルディスカッション

[パネリスト]

竹内 淳 ミューザ川崎シンフォニーホール事業部長

坪田知広 前出

西濱秀樹 山形交響楽団専務理事、公益社団法人日本オーケストラ連盟専務理事

矢田文雄 前出

[モデレーター]

石田麻子 前出

趣旨

2017年度に文化芸術基本法が改正、文化芸術推進基本計画が策定されるなどの動きを経て、2018年10月に新・文化庁が組織改編により誕生した。学会設立10周年を記念する本企画では、はじめに、坪田知広氏(文化庁参事官(芸術文化担当))をお招きして、文化庁の新たなかたちについて基調講演をしていただき、文化政策の今後の方向性を考える機会とする。

続いて、我が国の文化政策が、体制だけでなく、その助成等の仕組みも変化する可能性をにらみ、(独)日本芸術文化振興会により企画され、2017年から2018年にかけて実施された調査『イングランド及びスコットランドにおける文化芸術活動に関する助成システム等に関する実態調査』の報告を行う。この調査は、「イングランド及びスコットランドについて、文化政策及び文化関係予算の概要、文化政策を担当する組織の概要及び文化芸術活動への助成制度の具体的な内容に関する実態調査を行うことにより、振興会における助成システムの機能強化はもとより、文化芸術活動に対する助成システムの充実及び文化政策の企画・立案に資する」ことを目的としたものである。

日本におけるアーツカウンシル制度を運用する(独)日本芸術文化振興会には、文化庁の再編に伴い、複数の助成事業が移管されており、助成事業に係る体制の整備と共に、効果的な助成制度の設計と運用が必至となっている。このような助成現場の課題認識に対応するべく行われた今回の調査結果から、英国の中でもとくに、アーツカウンシル・イングランドにおける、審査やモニタリングの手法、芸術団体等の自律性確保のあり方、政府との関係などを中心にとりあげる。さらに、助成制度を運用する人材の存在や活動の主体性がクローズアップされており、これらの成果を示しながら、アーツカウンシル制度の本質に迫る機会としたい。報告は、現在、(独)日本芸術文化振興会で助成事業に携わる矢田文雄氏((独)日本芸術文化振興会基金部長)と、同調査に携わった石田麻子氏(昭和音楽大学教授)からの、我が国の助成事業の現状をふまえたものとなる。

さらに、パネルディスカッションでは、大規模な助成先である劇場・音楽堂等の代表として竹内淳氏(ミューザ川崎シンフォニーホール事業部長)、オーケストラの代表として西濱秀樹氏(山形交響楽団専務理事、(公社)日本オーケストラ連盟専務理事)が加わり、芸術創造の現場からの意見を交え、文化芸術の未来につなげる助成制度を展望する。

本企画により、学術的な立場を担保しつつ我が国の文化政策に対して提言し、文化芸術創造の現場との適切な接点を維持しながら、音楽芸術をはじめとする文化芸術のマネジメントにかかる将来像を展望、発信し続ける本学会の姿勢を確かなものにする。

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第11回冬の研究大会「前夜祭」

ラウンドテーブル「異文化と自文化の境界――〈文化〉再考」

日時:2018年12月15日(土)18:00~21:00

会場:昭和音楽大学南校舎2階 A211

登壇者(敬称略、五十音順、*は非会員、+は企画・コーディネート)

趣旨

〈文化〉とはいったいなんだろうか。わたしたちは、自分と異なるもの(他者)と出会うと、それが「異文化」と呼ばれるものであることに気づく。そして「異文化とどう付き合うか」「異文化とはなにか」と考えさせられる。やがてそれを裏返して「なにをもって自文化とみなすことができるのか」へと思考が進む。さらに「文化を自他に分けることは可能か」「文化に境界線を引くことはできるのか」へ問題を転じ、「そもそも〈文化〉とはなんであるか」に議論は向かっていくことになる。

〈文化〉を対象とする研究や活動は多々あるが、〈文化〉という語の定義は一様ではない。その目的・方法によって異なり、さらには同じ領域の活動であっても人によって異なる位置づけがなされることも稀でない。〈文化〉を人類の営み一般と広く捉えるものもあれば、〈文化〉を社会と深く連関したものと位置づけるものもあり、〈文化〉に政治性・イデオロギー性を見出すものもある。われわれの日常の生活と密接であるからこそ、〈文化〉は捉えにくいと言ってもよいかもしれない。

本ラウンドテーブルでは、〈文化〉に関する複数の領域の研究者や実務家により、各領域・各方法論における〈文化〉の定義を共有し、また〈文化〉がいかに問題となるか(ならないか)討論する。これにより、〈文化〉に関する議論の多面性を捉え直し、〈文化〉を再考する一助としたい(ただし、必ずしも結論――例えば、〈文化〉という語に統一的な定義を与えるというような――を出そうというものではない)。音楽を中心とするマネジメントや政策などを対象領域とする当学会としては、いささか異質な企画に映るかもしれない。しかし〈文化〉は音楽やその他の芸術を包含するのだから、これを再考することは足元を見直すことでもある。それは文化政策やマネジメントの新たな議論を誘出するだろう。本企画がそのきっかけになれば幸いである。

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