日本音楽芸術マネジメント学会 設立趣意書

 我が国において、文化芸術団体や文化芸術施設におけるアートマネジメントの必要性が認識されるようになったのは、1990年代に入ってからのことである。その背景には、80年代を通じ全国各地に公立の文化芸術施設が多数設置され、設置理念に即した事業展開と適切な管理運営が必要となったこと、また、同年代の後半頃から民間企業等による文化芸術への支援活動(メセナ)が盛んとなり、文化芸術団体や文化芸術施設がこれらの支援を受けるには経営の適正さが求められるようになったことなどがある。
 このため、90年代の半ば頃から、国・地方公共団体等による研修会が開催されるほか、高等教育の場でもアートマネジメントに関する学科やコースが設けられ、教育と研究が組織的に行われるようになった。大学におけるアートマネジメントに関する教育研究は、その意味では、たかだか10年の歴史を有するに過ぎないが、その間、アートマネジメントに関する研究の蓄積も徐々に進み、また、文化芸術団体や文化芸術施設における卒業生の活動についても一定の評価が得られるに至っている。
 折しも、2007年4月から実施された第二次「文化芸術の振興に関する基本的な方針」において、アートマネジメント担当者の育成が重点事項として取り上げられ、政府として積極的な対応を行っていく姿勢が示された。
アートマネジメントは、対象とする文化芸術の領域や施設により発現の在り方が異なり、すべてを一つに包括することは困難である。一方、今日とりわけこれが必要とされているのは「音楽芸術」の分野である。そして、それが具体的に現われる場面は、音楽芸術団体であり、劇場・ホールであるといえる。また、「音楽芸術」という側面に限れば、そこに一定の共通項が見られ、研究、教育及び実践の各場面において、その対象と内容の範囲をある程度画することが可能と考えられる。
 このような状況に鑑み、我々は、「日本音楽芸術マネジメント学会」を設立し、次のような目的のもとに、「音楽芸術」に焦点を当てたアートマネジメントに係る研究と教育を推進することとする。
第一は、「音楽芸術の振興ないし保護に係るマネジメント及び政策に関する研究」を行うことである。研究の対象は、実践的な内容を中心とすることとし、会員は、研究者、実務家、行政官、大学院生、関係音楽芸術団体等、幅広い職域に所属する者とする。
第二は、「音楽芸術に係るアートマネジメント教育に関する研究」を行うことである。特に、大学におけるアートマネジメント教育に係るカリキュラムの開発と標準化、教科書・教材の開発を行うとともに、アートマネジメント担当者養成課程及びその認定の在り方に関する研究を行い、将来これを具体化することも視野に入れるものとする。
 「音楽芸術」に係るアートマネジメントの研究と教育は、劇場・ホール等における指定管理者制度の導入や、公・私による音楽芸術支援の枠組みの大きな変化により、今日その必要性がますます高まっている。我々は、本学会の設立によって、このような社会の要請に応えていくものとする。